学会発表:濱田博之・近藤章夫(2005)

発表タイトル:
GISを用いた地方工業化過程の分析

発表学会等:
日本地理学会(2005年度秋季学術大会)
2005年9月17日、茨城大学

要旨:
1.研究の視点
  北関東から南東北にかけての地域は1960年代後半よりが本格的な工業化が進展していった。これらは企業内地域間分業が形成されていくなかで、主に労働力を求めて農村部にも生産工場としての役割を持つ工場が立地していったものとされている。
  一方でこれらの地方工場が地域的・時系列的にどのような変化をみせながら展開していったのか、マクロな視点からの検討は充分とはいえない。そこで本研究ではこの点を明らかにすることを目的とし、市区町村別の製造業事業所開業率を時系列的に検討する。これにより時期によって工場の新設がいかなる地域で活発に行われてきたのか、その変化を明らかにすることができるものと考える。
  また同時に廃業率にも注目する。近年のスクラップ&ビルドが活発に行われている状況のもと、工場閉鎖のターゲットとなっている地域にはどのような特徴が見いだせるのか、この点を明らかにする。

2.既存研究
  開業率・廃業率に関しては主に計量分野から多くの分析が試みられており、どのような要因によって決定されているのかの把握が進んでいる。それらの先行研究によれば開業率と廃業率は強い相関関係を持ち、これらは都市規模(人口)と一定の関係を持つとされている(吉村,2000など)。しかし開業率と廃業率の間にみられる強い相関に関して、その要因は明確には説明できていない。
  また一方で市区町村別での地域差に注目した研究は存在しない。確かにこれまで市区町村ごとに人口などとの相関を分析した研究は存在したが、地方の工業にあたっては東京からの距離が影響を与えていることが指摘されているなか、空間的な分布にまで踏み込んだ研究は行われてこなかった。

3.使用データと分析手法
  開業率・廃業率のデータは事業所・企業統計より明らかにできるが、96-99年を除き公式には発表されておらず、そのため他の年次に関しては推計するほかない。本研究ではこれらのデータをもとに中小企業白書と同様の推計式を用いることで、市区町村別の開業率・廃業率の経年変化を明らかにした。また地域としては工業化にあたって東京の影響を大きく受けたと考えられる北関東・南東北地方を中心に対象とした。
  東京都心からの距離帯別分析を行ったところ、都心部から離れるにしたがい開業率・廃業率とも漸減するものの、地方中核都市の含まれる距離帯では突出する傾向がみられた。
  このほか分析結果の詳細については当日に報告する。

吉村弘(2000):都市規模と事業所の開業率・廃業率.地域経済研究(広島大学),11,pp.45-62